フランチャイズという起業の選択肢を考える
フランチャイズとは何か
フランチャイズとは、本部となる親企業が商標や店舗デザイン、確立されたサービスメニュー、営業ノウハウなど一式の使用権を加盟事業者に提供し、加盟事業者は、その対価(ロイヤリティー)をフランチャイズ本部に支払うという事業形態です。事業の諸権利を提供する本部側を「フランチャイザー」、提供を受ける加盟事業者側を「フランチャイジー」と言います。
【フランチャイズ開業までの手順】
フランチャイズでの開業までには、さまざまな確認事項や本部との面談などの段階を踏みます。そのおおまかな流れは、以下の通りです。
1.情報収集と業種の選択
まずは資料を請求するなどして情報を収集、比較検討し、候補となる業種を絞り、さらに具体的なフランチャイズを選びます。次に候補となったフランチャイズ(FC)本部にコンタクトを取って、資料やインターネットの情報だけではわからない部分を把握していきます。直接面談の機会もありますから、開設にかかる費用・条件面について改めてしっかり確認しておきましょう。この段階で契約を確定するわけではないので、複数候補で迷っているならそれぞれの話を聞いてみることももちろんOKです。こちらからの質問の回答を保留にしたまま契約を進めようとするような企業には注意が必要です。また、実際の店舗にも足を運び、雰囲気や店員・社員の様子も確認しておくといいでしょう。
2.本部責任者・役員との面談
最初は説明会や相談会への参加、あるいは担当者との面談から始まることは多いですが、前向きに話が進めば、本部責任者や役員との面談が設定されることもあります。企業経営を担う上席と実際に話して、事業理念や将来的な事業戦略について確認できる機会は重要です。大きな方針に自分の考えが合うかどうかを確認しましょう。面談の予定がなければ、設定できるか聞いてみてもいいでしょう。
3.「法定開示書面」を確認する
フランチャイズ契約に際して、FC本部側には契約書面だけでなく、会社概要や契約内容をよりわかりやすく加盟事業者に説明する義務があります。このことは中小小売商業振興法で定められており、その書面を「法定開示書面」と言います。後々のトラブルや後悔が起きないよう、契約書と合わせて細部まで確認しておくことが大切です。
4.物件探しと評価
新規開業用の店舗を選定する際は、「商圏」「動線」「立地点」を見た上で、これらを満たす場所を選ぶことが、事業の成功には重要だと考えられています。
「商圏」はターゲットとなる顧客層が十分な数を見込め、需要と供給の関係が合致しているか、「動線」は顧客を円滑に誘引できる路面にあるか、「立地点」は物件そのものの広さや周辺環境の状況、視認性などを確認します。基本的には、FC本部が候補地の評価をして、事業性の高い物件を選定してくれるとは思いますが、全てを委ねるのではなく、自分なりの視点で将来性を含めて検討するべきでしょう。
5.事業計画書を作成する
融資が必要な場合は、事業概要、資金計画、売上予測、人員計画、収支計画、返済計画等で構成された事業計画書を作る必要があります。金融機関は、事業計画書の内容を見て融資可否を判断しますから、あいまいな部分のないきっちりした書面に仕上げましょう。
6.加盟契約をする
加盟契約の際には、フランチャイズ契約とは別に、店舗の賃貸借契約や設備のリース契約なども締結することがあります。本契約の内容を細かく確認することはもちろんですが、並行して行う契約についても、互いの関連性などに見落としがないよう、特約や但書きなども必ず確認しましょう。
7.事業開始準備を経てオープンへ
実際に店舗をオープンするまでに、店舗そのものの準備の他に、研修を受けたり、店員を採用したりと、やることがたくさんで忙しい時期になります。本部のサポートをできる限り活用しつつ、オープン後の戦略も含め入念に準備をしておく必要があるでしょう。
【フランチャイズ開業にあたって大切なこと】
上記の流れでもわかるように、自分で調べたり比較検討したり、契約書をはじめ多くの書面を確認したりと、実に多くのことを行わなければなりません。その一つひとつにしっかり目を通し、今どの段階にあるかをしっかり確かめながら、進めていくことが大切です。オープンさせることばかりを意識すると、重要事項やオープン後に必要な義務などを見落としがちです。中長期的な展望を持って、堅実なフランチャイズ開業を目指しましょう。
フランチャイズのメリット・デメリット
事業形態として広く展開されているフランチャイズですが、加盟に際しては当然メリットもあれば、デメリットもあります。
【フランチャイズのメリット】
1.初心者でも簡単に開業できる
開業・運営に必要な諸権利とノウハウ一式がパッケージ化されて提供されるため、起業初心者でも比較的簡単に開業できます。
2.広告宣伝・集客に手間がかからない
すでに確立・認知された商標・商号による開業なので、必要以上に広告宣伝に手間や費用をかけずに、開店当初から集客を見込めます。また、ブランド力により、一過性ではなく継続的に一定の集客が得られます。
3.業績向上のためのサポートを受けられる
新商品の開発や季節ごとの販売促進キャンペーンなど、売上を増やすための施策がFC本部から随時提供されます。また、ディスプレイの変更や接客向上の方法など、業績アップの方策も受けられます。
【フランチャイズのデメリット】
1.独自性が出しにくい
開業・運営・広告宣伝にかかる権利・ノウハウをパッケージ化した事業形態のため、加盟店舗ごとの独自性は出しにくいと言えます。
2.ブランド低下のリスクがある
他の加盟店舗が起こした不祥事で、ブランドイメージが大きく下がってしまうというリスクがあります。内容によっては急激に客足が離れ、ダイレクトに業績悪化につながることもあります。
3.ロイヤリティーの支払い負担がある
フランチャイジーは、フランチャイザーに対して事業の権利やサポートの対価として、ロイヤリティーを支払わなければなりません。基本的には毎月の支払いになります。その分、利益を得ているのでデメリットとは言い切れない部分もありますが、売上が伸びない月でも必ず支払わなければなりませんし、独自の起業には発生しないという点ではデメリットと言えます。支払い形態は、歩合制、定額制、その他条件設定があるなど、契約ごとに異なるため注意が必要です。
4.競合店舗の出店リスクがある
業種によっては、自店舗の近隣に同種の競合店舗が出店するケースを想定すべきです。他ブランドであるなら、商品・サービスの差別化による棲み分けは可能ですが、同一ブランドが出店する場合はハイリスクです。競合店の方が規模が大きい、あるいは集客しやすい立地である場合は、さらに厳しい状況になります。独自性が打ち出せないところに、このような競合店の出店の可能性が常にあることは留意すべきです。
フランチャイズ開業時の注意点
メリットもデメリットもあるフランチャイズですが、納得のいく経営をするためにも、フランチャイズ開業時の注意点をおさらいしておきましょう。
【契約内容をしっかり確認する】
フランチャイズ契約はもちろんのこと、店舗や設備などの契約があるかもしれません。一つひとつの契約条件、期間、解約に関する条項などをしっかり確認して、あらゆる状況を想定しておきましょう。
【資金面での計画と準備】
融資が必要な場合は、事業計画書の作成・提出が必須になります。また、事業計画書通りの運営をできるだけ行っていけるよう、初期費用や自己資金の準備もしっかりしておきましょう。ギリギリのラインで見積もるのではなく、ある程度の余裕をもって計画することが大切です。
【独自性を追求し過ぎない】
デメリットでも述べましたが、フランチャイズ店舗には決められたブランドイメージが求められるため、自分が経営しているからといって、オリジナリティーを追求し過ぎないことも大切です。与えられている広告、運営方針を上手に「活用」するスキルを磨いていきましょう。
【人任せにしない】
事業シミュレーションなどを、フランチャイザー任せにし過ぎないことも大切です。実際に店舗を運営しているのは事業者本人ですから、自分なりの計画や見積もりをしっかり立て、比較することで、より良い経営ができるようにしていきましょう。
【拘束時間は実質長くなる】
営業時間や営業日などは、統一の規定があるため、自己都合で休業したり、営業時間を変更したりはできません。会社員時代にそれほど長時間労働を経験していなかった人の場合は、拘束時間が長くなることを想定しておく必要があるでしょう。
【サポート体制を重視する】
フランチャイズ契約において、ロイヤリティーなどの支払い設定(金額)により、受けられるサポート体制が変わってきます。費用面だけを見て安いからと決めてしまわず、安心して店舗経営ができるサポート体制の充実した契約を選びましょう。
【ライバル店舗の出現防止について確認しておく】
営業地域での独占的な販売権や営業権を、フランチャイザーが加盟店に対して保障する「テリトリー権」を保証するフランチャイズ企業もあります。競合の出店が気になるのであれば、このような契約事項が入っているかも確認しておきましょう。
こんな記事も読まれています
- 賃貸事業用コンテンツ
- 起業の形は法人設立と個人事業主のどっち?
- 賃貸事業用コンテンツ
- 店舗物件の「二度の引渡し」とは
- 賃貸事業用コンテンツ
- 店舗開業成功のカギ!事業計画書の作り方
- 賃貸事業用コンテンツ
- 事業用賃貸物件と居住用賃貸物件はどう違う
- 賃貸事業用コンテンツ
- 「商店会」などの団体について