商圏調査の基本とは?長く続けるお店づくり
お店を長く続けるためには、その「商圏」に合ったお店づくりを進めることが重要です。商圏と自分のお店のコンセプトが合っていなければ、どれほどクオリティーの高い商品でもなかなか売れません。
店舗開業に際して、自分で商圏調査を進めるための三つの基本ステップについてご紹介します。
地図と統計データで商圏の基本情報を整理
まず、地図や統計情報などアクセスしやすい情報を収集して組み立て、候補エリアとターゲットとする客層の基本的な情報を整理していきましょう。
商圏の明確な定義はありませんが、一般的には「日用品を扱う店なら5分程度、買い回り品を扱う店なら10分程度でアクセスできる範囲」とされています。しかし、この「5分」「10分」といった数字は商品によって当然変わってきます。自分のお店が扱う商品の性質を考えて、どれくらいの範囲の人が来てくれるのかを考えてから商圏を決めましょう。
商圏を決めるためにはまず地図を用意します。そして、お店の候補となる場所を中心として、商圏の大きさに見合った半径で円を描き、商圏の範囲を「見える化」してください。意外と広く感じたのではないでしょうか。円に含まれるエリアが住宅地なのかオフィス街なのかなど、その特性を把握しましょう。
商圏の性質をより立体的に理解するためには、統計情報が参考になります。まずは年代別・世帯別の人口を把握するために国勢調査や地域の人口統計を探しましょう。商圏のある地域の役所の統計課や図書館に行けば、かなり細かい統計情報が手に入るはずです。
最後に、商圏の「市場規模」をつかみましょう。市場規模は「一世帯あたりの消費額×世帯数」で大まかに計算できます。総務省統計局のホームページにも掲載されている「家計調査年報」(http://www.stat.go.jp/data/kakei/index2.htm)で一世帯あたりの消費額を知ることができるので、ぜひ有効活用してください。
実地調査で商圏の詳細と顧客を知る
前記のように地図と統計情報からは商圏の概要をつかむことができますが、「文化」「雰囲気」といったものはわかりません。これらを知るためには、現地に直接足を運ぶ必要があります。
ただし、事前に調べるべきことを決めずに訪れても、インプットできる情報はそう多くありません。現地では、交通量や歩行者数、競合店、店舗物件の候補を最低限チェックするようにしましょう。
歩行者を調べる場合は、数はもちろんとして「質」に着目します。歩行者の性別や世代、職種、ファッション志向、経済力(外見から大まかには判断できます)などを見ることで、統計情報には出てこない生きたデータを手に入れることができます。自店に来店してくれるタイプが、どれくらい商圏にいるのかをチェックしましょう。
競合店調査においては、客数や客層、営業時間、従業員の特性(性別・世代・接客スタイル)を見ます。特に従業員の特性は真似も差別化もしやすいので、情報をメモに残しておきましょう。
候補となる物件を見るときは、建物の古さや清潔さにくわえて、他に入っているテナントの業種や雰囲気を確認します。たとえば、カフェを出店したいと思っているビルに「夜のお店」が入っていると印象はあまりよくありませんよね。自分が出したいお店の雰囲気に合っているのか、チェックが必要です。
商圏と顧客に合わせて自店のコンセプトを微調整する
地図、統計情報、現地調査で得られた商圏情報および顧客の特性に関する情報を基にして、事業計画を作成しましょう。
よほど運がよくない限り、得られた情報とそれまでに考えていたお店のコンセプトとの間には、何かしらの「ズレ」が生じているはずです。物件=商圏を変更したりお店のコンセプトを変更したりすることで、「ズレ」を埋める必要があるでしょう。
一方で、あえて「ズレ」を埋めないまま出店する手もあります。その「ズレ」が差別化要因になりうるためです。たとえば、いかにも「下町」の風情のある場所にハイセンスなカフェを出店したからと言って、必ずしも流行らないとは言い切れません。むしろ商圏の中で目立つがゆえに、評判を呼ぶかもしれないからです。
商圏や顧客の特性と自店のコンセプトをどこまでどのようにすり合わせるかは、出店者のセンスや美学にも依存するところがあります。どの部分を商圏に合わせ、どの部分で自己を貫き通すのか、納得できるまで考え抜くことが求められます。
こんな記事も読まれています
- 賃貸事業用コンテンツ
- 店舗物件の「二度の引渡し」とは
- 賃貸事業用コンテンツ
- 貸店舗物件の種類・特徴を知ろう
- 賃貸事業用コンテンツ
- 起業の形は法人設立と個人事業主のどっち?
- 賃貸事業用コンテンツ
- 店舗経営に伴うリスクと備えについて
- 賃貸事業用コンテンツ
- 事業主が知っておくべき店舗の内装制限とは